成道館日誌

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月次 アーカイブ 2013 / 10月

公立小学校に反転授業

9月24日の朝日新聞に、「『反転授業』公立校で」という記事があった。

「反転授業」というのは、これまで学校の授業で教えてきた基礎的な内容を家庭で予習し、家庭で取り組んでいた応用問題を学校で学ぶようにする方法。

これを、佐賀県の武雄市の小学校で始めるというのである。

武雄市ではどのように行うのかというと、「教師が教科書を説明する動画を撮影する。それを端末に入れ、児童はその端末を持ち帰り、動画を見て予習するのが宿題となる。そして授業では、つまずいている箇所を説明したり分からないところを教え合ったりする。さらに、レベルに応じた復習問題が宿題になる。」ということらしい。

この方法が公立小学校でうまくいくと思っているのだろうか。灘中高や開成中高のようなエリート校ならうまくいくだろうが、公立小学校でうまくいくはずがない。残念ながら失敗するだろう。

新聞には「課題も大きい」とあり、課題の一つ目として、「子供がどこまで意欲を持って予習に取り組むか。教材の魅力を高めることがカギを握る。」とあったが、みんなが意欲を持って予習に取り組めるのならば、これまでも宿題をみんなきちんとやってきてスムーズに授業が進んでいるはずである。復習の宿題でさえまともにやって来られないのに、動画を見て理解する予習をみんなができるわけがない。

授業では「子どもが分からないところを教えあったり、解き方を端末で見て共有したりする場面をつくる」らしいが、授業でわからない子を教え合うというのも大問題。家庭で動画を見て理解した子は、わからない子を学校で教えるために予習していることになる。何のための予習か。できる子にはもっと発展的な問題をさせればいいのではないか。「教え合い」「学び合い」というのは学校の授業でやるべきではない。教師の職務放棄に近い。

また、「教材の魅力を高めることがカギを握る」というのもピントがずれている。動画のできの善し悪しにかかわらず見ない子は何人も(あるいは多数)出てくる。そして、見ない子が何人も出てくると結局学校の授業で動画と同じことをやることになり、「反転」にならない。

課題の二つ目に、「低学年ほど映像を見るように促す必要があり、保護者の協力が欠かせない。」とあったが、熱心な保護者は映像を見るように促すだけでなく一緒に動画を見るだろう。そして我が子が理解できているかどうかも確かめるはず。もし理解できていないと熱心な保護者ほどその場で我が子に「授業」をしてしまう。これでは学校の先生の役目を親がやっていることになる。ここまでやってくれる保護者がいればいいが、全員このようにできるわけがない。

学校の先生の動画編集にどれぐらいの時間がかかるのか。レベルに応じた復習問題を宿題にするということだが、1クラスで何種類のレベルの宿題を用意するのか。先生の負担は大きい。

「反転授業」。公立小学校ではやめたほうがいい。